-
コリンダ
投稿日 2020年2月11日 21:06:00 (未分類)
例年よりも暖かな、クリスマスの日。
黒いクリスマスといわれるのは、
白い雪がなく、どこか暗い雰囲気があるからなのだろう。
普通なら家族で過ごすだけの静かな祝日なのに、
ルーマニア人の暮らす伝統的な村では、
冬の習慣コリンダがみられる。
隣のブラショフ県へと車を走らせた。
目指す村へ行く途中、
ちょうど民族衣装を着た少年たちが通りを歩く姿と遭遇した。
楽団も付き添い、手に籠を持っている姿も見られる。
ある家に入っていくので、
吸い込まれるように中へと入っていった。
中庭は、すでにお祭りの興奮が満ちており、
アコーディオンの音色と若者たちの陽気な歌声がこだましていた。
黒い上着の下には、白い羊皮のベストを着ており、
どれも色鮮やかな刺繍がほどこされている。
よそ者の訪問者であるにもかかわらず家の主人が手招きをしてくれたので、
よい場所で撮影をすることができた。
演奏を終えると、主人は若者たちを飲み物や焼き菓子でもてなした。
一息つくと、すぐに若者たちは
次の宿を目指して出て行った。
目的としていた村では、
子供の小グループが歌を歌いに近所を回るだけのものだった。
たずねると、昨夜に若者たちの伝統行事は終わってしまったらしい。
仕方なく、フォガラシュ地方の北側へと向かった。
村で聞き込みをしていると、
明日の12時に教会の前であるという情報を得た。
その翌日、ルペアの近くにある村を訪ねることになった。
教会の前へ行くと、
確かに羊の毛皮のコートに身を包んだ少年たちがいた。
中には、地面に横になって眠っている者もあった。
たずねると、「大丈夫。もうすぐ、歌うよ。」という返事。
白い羊皮のベストに刺繍、
さらに目を引いたのは美しい帽子飾りだった。
色とりどりの造花に鏡が添えられ、
よく見るとひとりひとり違っている。
ルーマニア正教会の中で、神秘的な神父の歌声が響き、
中に置かれたクリスマスツリーが昨夜の祝日のにぎやかさを物語っていた。
しばらくすると、民族衣装をきた少女たちが次々と教会に到着し、
ミサの終わりに歌を歌いはじめた。
旦那を呼びに外に出ている間に、
今度は先ほどの少年たちが到着して、
すでに不思議なリズムの歌を歌っていた。
拍子抜けをするようにあっという間の出番だったので、
村人たちに拙いルーマニア語で尋ねてみると、
目的としていたヤギの人形の出番はすでに終わっていたようだ。
昨夜12時から朝までこの若者たちは村を回って、歌い疲れていたのだ。
がっかりとしながらも、何とか村のことを何とか聞き出し、
優しいおじさんが伝統的な住まいを見せてくれると約束してくれた。
こうして、おじさんの後をついていくと、
先ほどの若者たちがにぎやかに笑いながら通りを下ってくる。
一人の少年を指さして、
おじさんは「あれが、うちの息子だよ。」といった。
集合写真を撮るときにも、熱心に上着を取れとか
親身になって指図してくれたのはそういうことだったのかと合点する。
おじさんはご近所の老夫婦の家に案内してくれた。
日本でいえばお正月に当たる、
最も神聖なクリスマスの祝日の昼、昼食前の微妙な時間。
断られても仕方ないのは覚悟の上だった。
しかし、優しい老夫婦は、外国人の私を喜んで迎えてくださった。
庭へと長く伸びた家の、道路沿いの一番奥の部屋を見せてもらう。
深い色あいの手織りの枕カバーが積み上げられ、
絵付家具に囲まれた心地よい空間。
何よりも家主のご夫妻に娘さん、通訳をしてくれたお孫さんの青年などが
親切にしてくださったことが何よりありがたかった。
民族衣装も見たく、聞きたいことも山ほどあったが、
「いつでも来なさい。」との言葉に甘えて、
今度ゆっくり出直したいと思った。
次の春に見られる行事を心待ちにしている。
Source: トランシルヴァニアへの扉 – Erdely kapuja-
Source: 東欧あんてな
続きを読む>>最新情報