-
シク村チプケ地区の結婚式
投稿日 2019年11月15日 00:00:00 (ルーマニア)
結婚式の当日は、あたかも天からの祝福のように
抜けるように真っ青な空が広がっていた。
朝早くから、花嫁宅へと向かう車がひっきりなしに
我が家の家を通りぬけて行った。
目の前の公園には、美しく着飾った兄妹の姿があった。
花嫁行列を今か今かと待ちわびる、ご近所さんたち。
元家主だったロージおばさんの姿も見える。
カロタセグから友人一家も遊びに来ていた。
シク村の男性よろしく麦わら帽をかぶった男の子たち。
町の出身の花婿や親類一同は、
車で村へやってきて、村の中心の教会の方から行列がはじまると耳にした。
かなたの方から、
かすかな楽団の音色が聞こえてくるような気がした。
花婿行列の集団が小さく現れ、
見とれているうちにだんだんと近づいてきた。
白いブラウスに黒いベストとスカート、
誰もが長く腰までのばしたお下げに赤いリボンが揺れている。
楽団の音色とリズムに誘われ、
足取りをそろえて歩む艶やかな人の群れ。
葦ののびた石橋を渡って、我が家の前を通り過ぎていく。
ふだんは静かな通りが人の活気で満ちている。
ご近所たちも皆が見守る中を、
ボクレータの飾りをつけたのは、ブーフェイと呼ばれる男性。
昔は花嫁行列の先導者だけで、
それは花嫁花婿の近い友人の内から選ばれていた。
今では、村の美しい晴着を着させたい親心から、
親戚の子どもたちは皆がボクレータを装うという。
行列が花嫁宅へ吸い込まれるように消えていくと、自然と小休憩に入る。
中では行列のもてなしと、花嫁の「手をもらう」、
つまりは求婚の儀式が執り行われる。
やがて昼食の後に、花嫁が登場した。
まるでクジャクの羽根のように鮮やかなローズマリーの冠を頭にのせて、
その姿はまるで王女さまのよう。
2人の先導人、花婿、
花嫁とその付添人が手をつなぎながら歩き、子どもたちがつづく。
この通りを何度となく、幸せな花嫁花婿が歩んでいったのだろう。
カルバン派教会では、神前での結婚の儀式と礼拝が行われていた。
子連れの私たちは、外で待機することにした。
教会の広い庭をかけっこしたり、落ち葉で遊ぶ子どもたち。
小さな参列者たち。
村の美しい衣装を着させたいとする親心が、
今にまで職人技を続ける原動力になっているのだろう。
できたばかりのローズマリーの冠は、
彼らが家に持ち帰ることができる。
結婚の日までにいくつのボクレータが集まるのだろう。
結婚式の翌日の朝、
朝食を取った後、帰りの荷物をまとめていると、
ドアをノックする音が聞こえた。
振りかえる間もなく扉がひらいて、
近所の花嫁さんの母親が皿にいっぱいのったケーキを手にのせて立っていた。
突然のことで驚きふためいていると、
テーブルの上にケーキのお皿が置かれ、
「おすそ分けよ。」とはじめてその顔が微笑んだ。
ピラミッド型に美しくのせられたケーキの山に
子どもたちの目は釘付けとなった。
何名もの女性の手で作られた何種類ものケーキを
ほおばりながら、結婚式の楽しい余韻に浸っていた。
Source: トランシルヴァニアへの扉 – Erdely kapuja-
続きを読む>>最新情報